PCB廃棄物処理対策の経緯について
主な経緯
1.カネミ油症事件の発生
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、絶縁性、不燃性などの特性によりトランス、コンデンサといった電気機器をはじめ幅広い用途に使用されていたが、昭和43年にカネミ油症事件が発生するなど、その毒性が社会問題化し、我が国では昭和47年以降その製造が行われていない。
2.POPs 条約の発効
世界的にも、一部のPCB使用地域から、全く使用していない地域(北極圏など)への汚染の拡大が報告された事などを背景として、国際的な規制の取り組みが始まり、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)が平成16年5月に発効した。
この条約ではPCBに関し、令和7年までの機器内における使用の廃絶、令和10年までの適正な管理が求められており、我が国は平成14年8月にこの条約を締結している。
3.JESCOによる処理体制の整備
既に製造されたPCBの処理に向けて、民間主導によるPCB処理施設設置の動きが幾度かあったが、施設の設置に関し住民の理解が得られなかったことなどから、ほぼ30年の長期にわたりほとんど処理が行われず、結果として保管が続いた。保管の長期化により、紛失や漏洩による環境汚染の進行が懸念されたことから、それらの確実かつ適正な処理を推進するため、平成13年6月22日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特別措置法)が公布され、同年7月15日から施行された。
法律の施行により、国が中心となって日本環境安全事業株式会社(現 中間貯蔵・環境安全事業株式会社、JESCO)を活用して、拠点的な処理施設を整備することとなり、平成16年の北九州事業の操業をはじめ、全国5箇所に処理施設が整備された。
4.ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の改定
PCB廃棄物を保管する事業者は、毎年保管や処分の状況についての届出を行うことのほか、政令で定める期間内の処分が義務づけられている。この期間は、法律の施行時には平成28年7月までと規定されていたが、法律の施行後に微量のPCBに汚染された電気機器が大量に存在することが判明したことや、JESCO における処理が想定よりも遅れていることなどを踏まえ、平成24年12月に政令が改正され、処理期間は令和9年3月末までとされた。
平成26年6月には、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画(計画上の当初の処理期限は全国一律で平成28年3月末)が変更され、JESCO の5つのPCB処理事業所ごとに計画的処理完了期限等が定められ、最長でも令和7年度までに高濃度PCB廃棄物の処理を完了することになった。
5.PCB特別措置法の改正
JESCOの事業所ごとの計画的処理完了期限は、地元との約束で、最短で平成30年度末。しかし、処分委託しない事業者や使用中のPCB使用製品も存在し、その達成が危ぶまれる状況であったことから、平成28年度にPCB特別措置法を改正した。
改正の概要は以下の通り。
- PCB廃棄物処理基本計画の閣議決定(第6条)
政府一丸となって取り組むため、PCB廃棄物処理基本計画を閣議決定により定める。 - 高濃度PCB廃棄物の処分の義務付け(第10条、第12条、第18条、第20条及び第33条)
保管事業者に、計画的処理完了期限より前の処分を義務付け、義務違反に対しては改善命令ができることとする。命令違反には罰則を科す。(使用中の高濃度PCB使用製品についても、所有事業者に、計画的処理完了期限より前に廃棄することを義務付け。電気事業法の電気工作物に該当する高濃度PCB使用製品については、同法により措置。) - 報告徴収・立入検査権限の強化(第24条及び第25条)
PCB特措法に基づく届出がなされていない高濃度PCB廃棄物等について、都道府県等による事業者への報告徴収や立入検査の権限を強化する。 - 高濃度PCB廃棄物の処分に係る代執行(第13条)
保管事業者が不明等の場合に、都道府県等は高濃度PCB廃棄物の処分に係る代執行を行うことができることとする。
時系列
2021年(令和3年) 9月 |
JESCO処理施設の関係自治体に対し、処理の継続等を要請 |
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2019年(令和元年) 12月 |
PCB廃棄物処理基本計画の変更 |
2016年(平成28年) 7月 |
PCB廃棄物処理基本計画の変更 |
2016年(平成28年) 5月 |
PCB廃棄物特別措置法の改正(平成28年5月2日公布、8月1日施行) |
2014年(平成26年) 6月 |
PCB廃棄物処理基本計画変更 |
2014年(平成26年) 5月 |
PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会において、基本計画変更(案)了承 |
2013年(平成25年) 10月~11月 |
JESCO処理施設の関係自治体に対し、PCB廃棄物処理基本計画の変更に関する検討要請 |
2012年(平成24年) 12月 |
PCB特別措置法の政令で定める期間を令和9年3月31日まで延長 |
2012年(平成24年) 8月 |
PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会報告書「今後のPCB廃棄物の適正処理推進について」取りまとめ |
2011年(平成23年) | PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会 ※ PCB特別措置法の施行後10年を経過したことを踏まえ、廃棄物の処理の現状を把握した上で、今後のPCB廃棄物の適正処理の推進策を検討するために開催 |
2004年(平成16年) | 日本環境安全事業株式会社(現、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO))の発足(環境事業団から引継ぎ) |
2001年(平成13年) |
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1973年(昭和48年) | (財)電気絶縁物処理協会が、処理施設の立地に向けた取組を開始 |
1972年(昭和47年) | 行政指導(通産省)により製造中止、回収等の指示 |
1968年(昭和43年) | カネミ油症事件発生(PCBを原因とする食中毒事件) |
1954年(昭和29年) | PCBの国内製造開始(鐘淵化学工業、三菱モンサント化成) |